36．九州協奏曲

＜第１楽章＞（１９９６年３月３日～５日）

【１】３日（日）

　多くの人が行き交う岡山駅も、さすがに23時を過ぎると人もまばらとなり、最終列車もほとんどの駅で既に出発してしまっている。
　その岡山駅で鉄研メンバーと共に特急「あかつき」を待つ。

　Ｓ君と私は「レガートシート」（普通指定席）、他の４人は「ソロ」（１人用個室Ｂ寝台）であるが、実は夕方のパチンコで儲けまくった私は「ソロ」への乗変を密かに考えている。
　今まで何度も夜行には乗ってきたものの、たいていは座席を取ることが多かった。値段が安いのが最大の原因である。今日も別に座席でもいいやと思っていたのだが、夕方に酒を飲んで気分が大きくなったのと、どうも体がだるいということで決心。
　酒の方はともかく、23歳にもなると数年前ほどは体の無理がきかなくなっているのも事実。

　列車が着くと、ひとまずレガートシート車の車端にあるミニロビーに荷物を置き、車掌と交渉。
　最初はダメの一点張りだったが、レガートシートの指定券の区間を見て、「これは疲れるだろう」と一転して寝台を案内してくれた。「ソロ」は上段のほうが天井が広いので、上段だったのは一安心。発行してくれた寝台券がペラペラのＰＯＳ券なのは残念。

　ドアロックの暗証番号を登録し部屋に入ると、非常に限られた空間を工夫して使っているという印象を受ける。荷物の棚もあるし、イスを伸ばしたベッドもまずまず。
　すぐに横になり、窓を眺める。天井ぎりぎりまで窓が広いので、部屋の電気を消すと星が美しい。かつて北海道からの帰りにも「トワイライトエクスプレス」の「ツイン」（２人用個室Ｂ寝台）車内で夜空をしばらく眺めていたことがあるが、今日の夜空も美しい。
　時折駅を通過すると、蛍光灯の筋がちょうど目の高さを流れてゆくのも夜行らしい車窓といえよう。しばらく本当にボーっと頭を空にして眺めていたら、いつのまにか眠っていたように思う。

（完成：２０００年　６月２０日・公開：２０００年　６月２２日）

第１楽章の続き

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